建設業許可申請イメージ

建設業の許可要件の1つに、請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しているという条件があります(建設業法第7条第4号、同法第15条第3号)。
具体的には、資本が十分であるか、もしくは資金調達が可能であるかという判断で、財政面を問われることになります。

この条件があるのは、建設業の許可が必要な規模の建設工事を受注するにあたっては、例えば設備や実際に工事を行う労働者の確保が必要で、必然的に一定量の資金が必要と考えられているためです。
財産的基礎の条件は、一般建設業と特定建設業では要件が異なり、特定建設業の場合、3,000万円以上(建築一式工事では4,500万円以上)を下請に発注できるため、その規模の請負契約をできる財産的基礎等の基準も、条件が厳しくなっています。

一般建設業

一般建設業の場合、次の「いずれか」に該当すれば、財産的基礎等を有するとみなされます。

・自己資本が500万円以上ある

許可申請には様式にしたがった貸借対照表が必要になるので、直近の決算から明確にわかる数字です。
個人なら、期首資本金+事業主利益+事業主借勘定-事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金です。
法人なら、貸借対照表の純資産合計の額です。

一度も決算を迎えていない新規の設立・開業の場合、開始貸借対照表を提出します。
※都道府県によって預金残高証明書を求められる場合もあります。

・500万円以上の資金調達能力がある

自己資本が500万円に満たない場合、財産的基礎を証明するには、金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書または融資可能証明書を提出します。
この預金残高証明書・融資可能証明書には利用期限があり、発行日が許可申請日の1ヵ月前まで、4週間前まで、2週間前までなど都道府県によって異なりますので注意が必要です。

また、自己資本が500万円に満たないからといって、預金残高証明書・融資可能証明書で不足分を補えば良いというものではなく、預金残高証明書・融資可能証明書のみで500万円以上の資金調達能力が証明できなくてはなりません。
ただし、許可申請時点での証明があれば良いので、常に残高額や融資可能額が500万円以上あることを要件としていません。

・直前5年間、建設業の許可を受け継続した営業の実績がある

新規の許可では当然に直前5年間の営業実績はないので、原則的に更新や業種追加のための条件です。
この場合、自己資本や資金調達能力として500万円を要件とせず、証明書等の提出もありません。

特定建設業

特定建設業の場合、次の「全て」に該当すれば、財産的基礎等を有するとみなされます。

・欠損の額が資本金の20%を超えていない

欠損の額が資本金に対して大きい場合、経営状態としては健全ではなく、そのまま欠損の額が増え続けると債務超過ということになり、財産的基礎としては不足しているということになります。
そのため、資本金に対して一定の比率までの欠損(欠損比率)までしか認められていません。

個人の場合の欠損の額は、事業主損失-(事業主借勘定-事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金)で求められます。
欠損の額≦期首資本金×0.2となれば要件を満たします。

法人の場合の欠損の額は、繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+繰越利益剰余金以外のその他利益剰余金)で求められます。
欠損の額≦資本金×0.2となれば要件を満たします。

同じことですが、欠損比率という言葉で表す場合は、欠損の額÷(期首)資本金×100≦20となれば要件を満たします。

・流動比率が75%以上である

短期的な支払い能力の指標として流動比率があり、流動比率が高いほど短期的には支払い能力を持っていることになります。
多くの下請を使う特定建設業では、下請の保護の観点からも、流動比率が低すぎると許可を受けることができません。

流動比率=流動資産÷流動負債×100≧75となれば要件を満たします。

・資本金が2,000万円以上である
・自己資本が4,000万円以上である

個人なら、期首資本金≧2,000万円以上、期首資本金+事業主利益+事業主借勘定-事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金≧4,000万円以上必要です。
法人なら、資本金≧2,000万円以上、純資産合計≧4,000万円以上必要です。