個人事業主の死亡等により事業を承継した場合、または個人事業主が会社を立ち上げ(法人成りして)、法人が事業を承継した場合において、建設業の許可は承継できません。
これは建設業の許可が申請者に与えられるものであり、事業主が変わった、もしくは個人から法人へと人格が変わった場合、承継人や承継法人はそれまでの許可の申請者ではないためです。
しかし、新たに許可を受けることで、それまでの事業実績が全て失われると、工事実績による配点が大きい経営事項審査では、評点が一気に下がる懸念があります。
事業の承継や法人成りによって、営業が継続して同一性があるにもかかわらず、こうした事情で公共工事の有資格者名簿の格付けが下がるのは適切とはいえません。
この点を救済する目的で、経営事項審査にて算定される以下の審査項目については、一定の要件を満たすことにより過去の実績を利用することが認められています。
【承継できる審査項目】
・工事種類別完成工事高
・利払前税引前償却前利益
・工事種類別元請完成工事高
・営業年数
また、承継が認められる要件は以下の通りになっています。
■個人事業主から個人が承継する場合
被承継人の配偶者や2親等以内の親族が、承継日(事業開始日)からさかのぼって、2年以内または3年以内までに承継している場合で、次のすべてに該当することが条件です。
さかのぼる期間が2年以内または3年以内までになっているのは、完成工事高において直前2年平均や直前3年平均が選択できるようにするためです。
①被承継人が建設業を廃業する
②事業承継によっても被承継人と承継人の事業年度が連続している
③承継人が被承継人の業務を補佐していた経験がある
承継人が新たに許可を得て事業承継する以上、被承継人は廃業することが条件です。
被承継人の死亡による廃業は、相続人によって死亡届を、それ以外は許可を受けている被承継人が廃業届を提出します。
承継であるからには、事業年度が連続しているのは当然で、原則的に連続性がなければ被承継人の事業実績を承継人の経営事項審査に引き継げません。
ただし、死亡によって即座に事業承継が行なわれないなど、やむを得ない事情がある場合には、個別に行政庁との相談となります。
なお、個人事業主では12月31日に決算ですが、事業承継のときの審査基準日は、承継のあった年なら承継日、翌年以降は12月31日です。
また、承継人が配偶者や2親等以内の親族であるだけでは要件を満たさず、被承継人を補佐していた経験が確認されます。
通常、個人事業主が近親者に建設業を引き継ぐときは、それ以前から経験を積ませるために事業を補佐させていることが多く、無関係の近親者が事業を引き継いで、経営事項審査に事業実績を利用することはできません。
■個人事業主から法人が承継する場合
法人が設立された日(事業開始日)からさかのぼって、2年以内または3年以内までに個人事業主から承継している場合で、次のすべてに該当することが条件です。
①被承継人は建設業を廃業する
②被承継人が承継法人において50%以上を出資している
③事業承継によっても被承継人と承継法人の事業年度が連続している
④被承継人が承継法人の代表権を有する役員である
個人事業主としての建設業の廃業と、事業年度の連続は、法人成りであれば問題はないでしょう。
個人で承継する場合と違い、法人で承継する場合には、被承継人(それまで個人事業主)の出資比率と役職が問われます。
被承継人が50%以上の出資で、代表権のある役員(代表取締役など)に就任するという点は、法人成りなら普通にあることですが、承継法人における被承継人の主体性を判断する基準として設けられています。
なお、審査基準日は、承継のあった事業年度は承継法人の設立日(承継日)、翌事業年度以降は事業年度の終了日(決算日)になります。