宅建業を営むためには、業務を行うための事務所が必要で、事務所を設置せずに宅建業を営むことはできません。
事業を拡大していくと、複数の事務所で営業することになります。事務所には、契約に権限を持つ者や、専任の取引主任者の配置が必要ですし、営業保証金や保証協会への加入金の金額に影響するため、事務所の数というのは、人的にも金銭的にも大きく影響します。
法人の場合、本店や支店として登記していれば事務所で、個人事業なら、主たる事務所や従たる事務所が該当します。しかし、宅建業における事務所というのは、宅建業を継続的に営なみ、契約に権限を持った使用人を置く施設であれば全て該当するため、登記の有無等は関係がありません。
ただし、以下のような場合には、宅建業における事務所とは認められません。
① 宅建業の業務を行わない事務所
② 建物の基礎が施工されておらず、移動が容易な事務所
③ ホテルの一室のように、業務を継続できない事務所
④ 賃貸借契約上、事務所としての使用が認められていない事務所
⑤ 同一フロアにおいて、他と独立していない事務所
それでは、1つずつ詳しく説明していきます。
① 宅建業の業務を行わない事務所
宅建業の業務を行わない支店等は、事務所として扱われません。例外は本店で、本店に限っては、支店で宅建業を営んでいれば、本店で宅建業を営んでいなくても、宅建業の事務所として扱われます。この扱いは、支店が宅建業を営んでいれば、本店は何らかの形で、宅建業の統括的な機能があると考えられているからです。
② 建物の基礎が施工されておらず、移動が容易な事務所
該当する事例としては、テント、移動式のユニットハウス、コンテナ等の臨時に設置された建物、車両等で移動が可能なものです。
③ ホテルの一室のように、業務を継続できない事務所
ホテルの一室は、他の部屋と独立性があり、移動できるスペースでもないですが、安定的に使用することができませんし、本来は宿泊施設である以上、社会通念上も事務所として認識されません。
④ 賃貸借契約上、事務所としての使用が認められていない事務所
アパートやマンション等の賃貸借契約や、管理規約等によって、事務所として使用することが違反であると、使用権原を有しない施設であるため認められません。賃貸物件の場合は、事前に契約等を確認しておきましょう。
⑤ 同一フロアにおいて、他と独立していない事務所
このパターンが、最も複雑で判断に困るでしょう。新たに事務所を用意するのは、資金が掛かるために、住居や他の法人と、同フロアで事務所にしたいと考える人も多いはずです。別ページで、事例を交えてさらに詳しく説明します。